Windowsで動画を再生したときにHEVCビデオ拡張機能の購入を促す画面が出て戸惑った人は多いはずです。
スマートフォンやアクションカメラで撮影した高画質動画の多くはHEVCという方式で保存されておりその再生に追加のコーデックが必要になる場合があります。
この記事ではHEVCビデオ拡張機能とは何かから安全な導入手順やお金をかけずに再生する選択肢まで順番に整理します。
仕組みを理解しておけば誤って危険なファイルを入れてしまうリスクも減り無駄な課金も避けやすくなります。
HEVCビデオ拡張機能を安全に導入する5ステップ
最初のセクションではHEVCビデオ拡張機能の役割を理解し実際に購入やインストールを行うまでの基本的な流れを五つのステップで整理します。
HEVCコーデックの仕組み
HEVCはHigh Efficiency Video Codingの略称で従来主流だったH.264より高い圧縮効率を実現する動画圧縮方式です。
同じ画質でもファイルサイズを大幅に小さくできるため4Kや8Kといった高解像度動画やスマートフォンで長時間撮影した映像でよく採用されています。
ただし圧縮方法が複雑な分だけ再生や編集のためには対応したデコーダーとエンコーダーが必要になります。
Windows標準環境ではこのHEVCデコーダーが入っていないことが多く追加コンポーネントとしてHEVCビデオ拡張機能が用意されています。
拡張機能が必要になる場面
HEVCビデオ拡張機能が必要になる典型的な場面はWindows標準のフォトアプリやメディアプレーヤーで動画を開いたときにコーデック不足のエラーが表示されるケースです。
「この項目を再生するには新しいコーデックが必要です」などのメッセージとともにHEVCビデオ拡張機能のインストール画面が案内されることがあります。
特にiPhoneや一部のAndroid端末で撮影した動画や監視カメラやレコーダーから取り込んだH.265形式の録画データなどでこのエラーが出やすくなります。
また拡張子がHEVCやH265ではなくMP4やMOVであっても内部の映像部分だけがHEVCで圧縮されているパターンでも同様に再生エラーが発生します。
有料拡張機能の特徴
Microsoft Storeで販売されているHEVCビデオ拡張機能はWindows10やWindows11上でHEVC動画をハードウェア支援を使って再生するための公式コーデックパックです。
価格はおおよそ数百円程度に設定されており一度購入すれば同じMicrosoftアカウントでサインインした複数のPCにインストールできます。
公式ストア経由で提供されるためマルウェア混入などのリスクが低くアップデートもWindowsUpdateやストアアプリを通じて自動で行われます。
ただし企業環境などで多数の端末に導入する場合にはライセンス形態や費用負担の設計をあらかじめ検討しておく必要があります。
Windowsでの購入手順
Windowsから安全にHEVCビデオ拡張機能を入手するにはスタートメニューからMicrosoft Storeアプリを起動する方法がもっとも確実です。
ストアの検索欄にHEVCと入力して表示される一覧からMicrosoft製のHEVCビデオ拡張機能を選択して詳細ページを開きます。
価格や対応環境を確認したうえで購入ボタンまたは入手ボタンを押すとMicrosoftアカウントに紐づいた形でライセンスが登録されます。
インストールが完了するとPCを再起動しなくても多くの場合はそのまま対象の動画を開き直すだけで再生できるようになります。
導入前の注意点
拡張機能を購入する前に本当にHEVCが原因で再生できないのかを確認することが重要です。
別のPCやスマートフォンで問題なく再生できるのに特定のPCだけ再生できない場合は確かにコーデック不足の可能性が高くなります。
一方で撮影時に動画が壊れていたりネットワークドライブから再生しようとして帯域不足が起きていたりするケースでは拡張機能を入れても解決しません。
また後述するように無料のメディアプレイヤーやデバイス製造元版の拡張機能で代替できる状況もあるためサブスクや課金に抵抗がある人は選択肢を比較してから決めると安心です。
HEVC動画をお金をかけずに再生する選択肢
次のセクションではHEVCビデオ拡張機能を購入しない場合にどのような方法でHEVC動画を再生できるのかを具体的な代替策ごとに整理します。
無料メディアプレイヤーの活用
Windows標準のプレイヤーにこだわらないのであればHEVC対応の無料メディアプレイヤーを導入するのがもっとも手軽な選択肢です。
これらのプレイヤーは独自にコーデックを内蔵しているためOS側にHEVCビデオ拡張機能がなくてもそのまま再生できる場合が多くなります。
日常的に動画を鑑賞する人であれば柔軟な再生機能や字幕機能をあわせて使えるため結果的に使い勝手が向上することもあります。
- VLCメディアプレイヤー
- MPVベースのプレイヤー
- PotPlayerなどの高機能プレイヤー
- 一部のBD再生ソフト
動画形式を変換する方法
拡張機能や専用プレイヤーをインストールしたくない場合はHEVCからH.264など別形式への変換を行うという手段もあります。
変換ソフトやオンラインサービスを使えばHEVC動画を一般的なH.264やMPEG4のMP4として書き出しなおすことが可能です。
変換後のファイルであれば古いPCやテレビ内蔵プレイヤーでも再生できる可能性が高まり共有相手の環境を選びにくくなります。
ただし変換のたびに画質が劣化したり変換時間がかかったりするため大量の動画を頻繁に扱う場合は現実的でないこともあります。
OEM版拡張機能の有無を確認
一部のメーカー製PCにはデバイス製造元からのHEVCビデオ拡張機能があらかじめ付与されている場合がありその場合は追加購入が不要です。
新しいノートPCやデスクトップPCを購入した直後であればまずこのOEM版が有効かどうかを確認してみる価値があります。
Microsoft StoreアプリのライブラリやWindowsのアプリ一覧からすでにHEVC関連の拡張機能が入っていないかを見直してみましょう。
| 確認方法 | Microsoft Storeのライブラリ |
|---|---|
| 費用 | 追加料金不要 |
| インストール元 | PCメーカー経由のライセンス |
| 向いているケース | 新品PCやメーカー製PCの利用 |
HEVCビデオ拡張機能エラーへの対処
ここではHEVCビデオ拡張機能まわりでよくあるエラー表示やトラブル例を取り上げそれぞれの原因候補と対処の流れを整理します。
コーデック要求メッセージへの対応
メディアプレーヤーで動画を開いたときに新しいコーデックが必要というメッセージとともにHEVCビデオ拡張機能の案内が出る場合はまず動画形式を確認します。
動画ファイルを右クリックしてプロパティを開き詳細タブでビデオコーデックの欄にHEVCやH.265の表記があればまさに対象となる形式です。
そのうえで標準プレイヤーで再生したいなら公式ストアの拡張機能を導入し別のプレイヤーを使うなら案内画面は閉じて構いません。
同じメッセージが出ても実際には別の形式だった場合はプレイヤー側の誤判定やファイル破損の可能性もあるため他のアプリでの再生も試してみてください。
インストールボタンが無効な場合
Microsoft StoreでHEVCビデオ拡張機能のページを開いてもインストールボタンが押せない場合はいくつかの原因が考えられます。
そのPCが企業管理下の端末でストアアプリからのインストールが制限されているケースでは管理者のポリシーに従う必要があります。
個人PCで同様の症状が出る場合はすでに類似の拡張機能がプリインストールされていたりサインインしているMicrosoftアカウントの地域設定が異なっていたりすることがあります。
ストアアプリを一度サインアウトして再起動し別のアカウントで試すことで解消するケースもあるため簡単な切り分けから進めると効率的です。
拡張機能導入後も再生できない場合
正式なHEVCビデオ拡張機能をインストールしたにもかかわらず一部の動画だけが再生できない場合は動画自体の破損や暗号化が原因の可能性があります。
特定メーカーのレコーダーや監視カメラでは専用の再生アプリでのみ開ける独自形式として録画されることがあり汎用コーデックだけでは再生できません。
別のPCや別のプレイヤーソフトで同じ動画を開いてみてそれでも再生できなければ撮影側の設定や保存状態を見直す必要があります。
またグラフィックドライバーが古いままだとハードウェア支援再生がうまく動かずカクつきやクラッシュにつながるためドライバー更新もあわせて行うと安心です。
Windows11で変わったHEVCサポート事情
次のセクションではWindows11とりわけ比較的新しいバージョンでどのようにHEVCやHEIFの取り扱いが変化しているのかを整理します。
Windows11 22H2以降の標準機能
Windows11のあるバージョン以降ではHEVCビデオ拡張機能をインストールしていなくても一部のHEVC動画やHEIF画像がそのまま再生できるケースがあります。
これはOS側に必要なコーデックが標準で組み込まれるようになったり特定のハードウェアがネイティブにHEVCを扱えるようになったりしたためです。
そのため新しいPCであればエラー表示が出る前に実際に動画や写真を開いてみて問題がないかどうかを確認する価値があります。
エラーが出ない環境であえて有料拡張機能を追加しても目に見えるメリットがない場合もあるため無駄な出費を避ける意味でも挙動の確認は欠かせません。
古いPC環境の注意点
Windows10からのアップグレード機など比較的古いPCではHEVCまわりの挙動が新しいPCと異なることがあります。
古いグラフィックチップではHEVCのハードウェアデコードに対応しておらずソフトウェアで無理に再生するとCPU使用率が高くなりカクつきや発熱が目立ちます。
このような環境では拡張機能を入れても快適に再生できない可能性があるため解像度を落とした動画を用意するか変換してから再生することも検討しましょう。
動画再生を目的にPCを新調する場合はHEVCやAV1など新しいコーデックへのハードウェア対応状況も事前に確認しておくと後悔しにくくなります。
HEIC画像再生のポイント
iPhoneで撮影した写真はHEIC形式で保存されることが多くこの表示にはHEIF画像拡張機能が関わります。
Windows11ではHEIF画像拡張機能が標準で入っているケースが増えていますが古い環境では追加インストールが必要なこともあります。
HEIC画像の閲覧とHEVC動画の再生はそれぞれ別の拡張機能が担当しているため写真が表示できても動画側でエラーが出るという状態は珍しくありません。
写真と動画のどちらで問題が起きているのかを切り分けて考えると必要な拡張機能や対処方法を絞り込みやすくなります。
ライセンスを意識した安全な利用のコツ
ここではHEVCビデオ拡張機能のライセンスや法的な扱いを踏まえながら安全にコーデックを利用するための考え方を整理します。
有料拡張機能を選ぶ判断軸
HEVCは特許やライセンス料が関係するコーデックであり公式のHEVCビデオ拡張機能の価格にはそのロイヤリティが含まれています。
仕事で動画を扱ったり大量の端末で長期的に利用したりする場合はこうしたライセンス面を考慮して正規ルートでの購入を選ぶことが重要です。
個人利用でもWindows標準プレイヤーでシンプルに再生したいというニーズが強ければ数百円の投資で環境が安定するメリットは大きくなります。
一方でたまにしか再生しないのであれば無料プレイヤーで済ませたり変換で対応したりする選択肢も現実的です。
非公式配布リンクのリスク
インターネット上には本来有料であるHEVCビデオ拡張機能のパッケージを誰かがアップロードしたファイルが出回っていることがあります。
これらのファイルはライセンス的にグレーなだけでなく改ざんされたインストーラーにマルウェアが仕込まれているリスクも否定できません。
短期的には無料で使えるように見えても情報漏えいやランサムウェア感染といった被害に遭えば結果的な損失は比較にならないほど大きくなります。
安全性を重視するならコーデック類は信頼できる公式ストアかメーカーサイトからのみ入手するという原則を徹底することが大切です。
企業利用で押さえたいポイント
企業や教育機関で多数のPCを運用する場合にはHEVCビデオ拡張機能の導入方針をITポリシーとして明文化しておくと混乱を防ぎやすくなります。
具体的には対象となる部門や業務用途を限定し必要な端末数やライセンス費用を試算してから一括購入やボリュームライセンスの扱いを検討します。
同時に無料メディアプレイヤーの利用可否や変換ワークフローの標準化など拡張機能に頼らない運用方法も含めて設計することが重要です。
セキュリティチームと連携し非公式なコーデックインストールを禁止するルールを決めておけば情報漏えいリスクの低減にもつながります。
HEVC動画再生環境を整えるときの指針
HEVCビデオ拡張機能はWindowsで高画質動画を滑らかに再生するための強力な選択肢ですが状況によっては無料プレイヤーや変換で代替することも可能です。
まずは手元のPCにすでにOEM版拡張機能や標準コーデックが入っていないかを確認し必要であれば公式ストアから正規の拡張機能を導入しましょう。
同時に古いPCや低スペック環境ではハードウェア負荷や画質とのバランスも考慮して動画解像度や再生方法を工夫することが快適さの鍵になります。
ライセンスと安全性の観点を押さえつつ自分の利用スタイルに合った再生手段を選べばHEVC動画の利点を最大限に生かした視聴体験が得られます。

